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腱鞘炎とは?
腱鞘炎(けんしょうえん)とは、手首や指の根元に炎症が起こった状態を指します。腱とは、筋肉の端で、細くなった部分を指しますが、腱は直接周囲と接触しないよう、腱鞘(けんしょう)というトンネルの中を通っています。
刀で例えると、刃の部分が腱であり、鞘(さや)が腱鞘となります。通常は、腱鞘の中を腱がスムーズにスライドしているのですが、手などを酷使することで腱と腱鞘が過度にこすれてしまい、腱鞘が腫れることがあります。腱鞘が腫れてトンネル内部が狭くなってしまうと、余計に腱と腱鞘がこすれてしまうため、痛みを生じます。このように、腱鞘の炎症によって痛みが生じる状態を腱鞘炎と呼びます。
腱鞘炎の症状
腱鞘炎の主な症状には、以下の2つがあります。
手首や指の痛み
腱鞘炎になると、指や手首を動かすことによって、炎症が起きた腱鞘と、腱鞘の中を通る腱との間に摩擦が生じるため、痛みが発生します。摩擦による痛みが主であるため、安静時の痛みはそれほど問題とならないことが多いと言えます。
関節の可動制限
腱鞘の腫れがひどくなってしまうと、腱鞘の内部が狭くなってしまいます。そして、腱鞘内部が過度に狭くなってしまうと、腱がひっかかってしまい、スムーズな関節の動きが阻害されます。
特に、指に腱鞘炎が生じた場合、指を動かす際にバネのように勢いよく指が動くことがあり、これを「ばね指」と呼びます。さらに治療を行わず、重度になった場合、腱鞘の中を腱が滑ることができなくなり、関節が動かなくなることもあります。
腱鞘炎の原因
腱鞘炎の主な原因は、その部分の「使いすぎ」です。冒頭で説明した通り、腱鞘炎とは、腱鞘という鞘の中を何度も腱が出入りすることで、腱鞘と腱の間に摩擦が起こり、最終的に炎症が生じた状態です。腱と腱鞘の間に起こる摩擦は、特定の関節を過度に動作させることで生じるため、日々の生活の中で同じ動作を繰り返す場合に起こりやすいと言えます。
具体的な動作として、日常生活では、家事や育児といったものが原因として挙げられます。特に小さなお子様のいる家庭では、抱っこなどの力を必要とする動作を反復するため、腱鞘炎を起こす原因となります。また現代人に共通する原因として、スマートフォンの長時間使用が挙げられます。スマートフォンは手首を固定した状態で親指を繰り返し動かすため、親指の付け根部分に腱鞘炎を起こす方も少なくありません。
仕事面では、パソコンを長時間使用するデスクワーカーに生じやすいとされています。またスポーツでは、ゴルフやテニス、野球、バドミントンなど、ラケットやバットを使うスポーツで腱鞘炎が起きやすいとされています。これらのスポーツでは「球を打つ」という、特定の動作が繰り返されます。また、向かってくる球を打ち返すために手首などに強い力がかかるため、腱と腱鞘の間に強い摩擦が生じ、腱鞘炎が起こります。
腱鞘炎の検査
腱鞘炎の検査には、以下のようなものがあります。
問診・視診・触診
腱鞘炎は起こりやすい部位が決まっているため、問診や視診、触診によってある程度診断することが可能です。指の腱が腱鞘内でひっかかりバネのように指が動く「ばね指」の場合は、特徴的な動きであるため視診で十分に診断することが可能です。
さらに、痛みのある腱鞘部に圧迫を加え、痛みの誘発を見る場合もあります。また、腱鞘炎が起きやすい部位の1つに、「母指の付け根」がありますが、親指を中に入れる形で拳を作り、手首を小指側に曲げることで痛みの誘発を見る「フィンケルシュタインテスト」というものもあります。
レントゲン検査
腱鞘炎をレントゲンで診断することはできませんが、他の疾患と鑑別するためレントゲン撮影を行うことがあります。
腱鞘炎の治療方法
腱鞘炎の治療方法として、以下のようなものが挙げられます。
保存的治療
腱鞘炎治療で最も重要なのは、患部の安静です。ただし家事や育児、仕事などにより患部の安静保持が難しい場合は、専用のサポーターなどを使用し、腱にかかる負担の軽減をはかります。
手術療法
重度の腱鞘炎により関節が動かなくなった場合は、腱鞘を切り開く「腱鞘切開術」を行い、腱がスライドできる状態に戻します。